にしし ふぁくとりー:西村文宏 個人サイト

Presented by Nishishi via Movable Type. Last Updated: 2019/10/01. 10:44:04.

すぐに逃げるのは無理(状況の認識と避難先の選択には時間が要る)

発生した直後に真実を認識できるわけではない

ハドソン川の奇跡」という映画があります。(クリント・イーストウッドが監督して、トム・ハンクスが主演した2016年製作のアメリカ映画)

2009年に、ニューヨークからシアトルへ向かう飛行機USエアウェイズ1549便がバードストライクによって故障し、空港へ引き返すことができずにハドソン川に不時着水した航空事故(@Wikipedia)を描いた映画です。川に着水したものの、乗客乗員は全員無事で「ハドソン川の奇跡」と呼ばれました。詳細は忘れましたが当時のニュース番組で、事故後に機長が「自分のパイロット人生は今日のためにあったのだと思った」的なことを言っていたと報道されていたのが印象的で記憶に残っていました。

さて、この映画では、事故後の調査で「機体の故障が分かった瞬間に方向転換していれば、川に不時着しなくても充分空港に戻れた」というシミュレーション結果が示され、機長が無駄に乗客を危険に晒したと糾弾されてしまう経緯が描かれています。
それを受けての機長の反論は、「機体が故障したとすぐに分かるわけではない」というものでした。

まず、機体が操縦できなくなり、何かがおかしいと気がつく。当然、いろいろ計器の操作を試してみる。様々な可能性を考えて操作を試した結果として「どうやら完全に故障したようだ」という結論が導き出せる。
そこまでたどり着いてようやく、「さて、この危機をどう乗り切るべきか」という次の思考ができるわけです。

真実は「バードストライクによる機体の故障」だったわけですが、故障が発生した瞬間に誰かが「回復できない故障が発生しました」と教えてくれるわけではありません。
その結論(真実)は、自分の頭と行動で導き出すしかないわけです。
したがって、実際に故障が発生してから「どうやらこれは故障したようだ」という結論に至るまでには数十秒くらいの時間が必要でしょう。どれほど訓練していたとしても。

映画では、「故障が発生してから30秒間ほど試行錯誤時間をおいてから空港へ引き返す」というシミュレーションを改めてさせると、空港へは到達できず直前で墜落してしまう結果になり、機長の判断が正しかったことが証明されました。(むしろ、可能な限り素早く川への着水を決断したことで墜落を防いだとも言え、機長は「自分の決断が誇らしい」的なことを語っていたように記憶しています。)

訓練のような、タイムラグなしの「よーいどん」で事象発生直後に回避行動が取れるようなケースが現実に起きる可能性は、あまりないでしょう。
まずは現状を把握する時間が絶対に必要になるはずです。

すぐに屋上に走れたわけではないだろう

この映画のことを思い出したのは、京アニ放火事件の報道でコメンテーターらが「すぐに逃げなかったのか?」みたいなコメントをしていたのを聞いたときです。

避難訓練みたいに、事前に「合図があったらすぐに屋上へ走って避難しなさい」みたいに言われていた状況なら、黒い煙が見えた瞬間に屋上へ向かって急ぐことはできたかも知れません。しかし、実際にはそんなに一瞬で避難の決断はできないでしょう。

もし建物の中で、もくもくと煙がやってきたら、まず「これは何なんだ!?」「どこから来た煙だ?」と考えるだけで、いきなり屋上に走ったりはしないと思います。
(真実は「1階の螺旋階段の下でガソリンに引火した」わけですが、3階に居る人間が「事象は1階で発生した」と気付けるとは思えません。たとえ階下から爆発の音が聞こえたとしても、それが本当に自社ビル1階での出来事だと確信が持てるとは限らないでしょう。もしかしたら他の建物の事象である可能性だってあるわけですし。)

で、「どうやらこれは避難しないとマズいようだぞ」と思い至ってからようやく「どこへ避難すべきか?」を考えられるわけで。
この段階に至るだけでも十数秒は経つでしょう。
そして、避難先の選択肢も「階段で階下へ降りて外へ出る」か「屋上に出る」かなど複数あるわけで、どれにするかを決断する必要もあります。
(真実は1階から燃えているわけなので屋上へ逃げるしかないわけですが、逆に屋上が燃えているなら1階へ逃げる必要があるわけで。避難する決断をしてからも「どこへ?」を考えるのに時間が必要でしょう。)

今回の場合は単なる火災ではなく、ガソリンによる爆発だったわけで、煙の到達時間はとても短かったという報道もありました。具体的にどれくらいの速度だったのかは分かりませんが。考える余裕もほとんどなかったのなら、なおさら避難は困難だったでしょう。

状況の判断には時間が必要で、避難先を選択する時間も必要なら、一瞬で逃げるのは無理です。

地震なら?

地震のように分かりやすい場合は、訓練通りの行動が取れるかも知れませんが。
ただ、地震後の対応が分かりやすいと感じるのは、散々学校等で避難訓練をしてきた経験があるからかも知れませんけども。
どうなのかな。揺れたらまずは身を守って、収まったらすぐに外へ、というのは訓練の成果でしょうかね? それとも、やはり選択肢が限られているので元々迷いにくい事象でしょうか。

しかし、「煙が見えたらとにかく走れ」という訓練をしていても、平屋ならともかく上層階の場合には「階上か階下かどちらへ走るか」という問題があるのでやはり一瞬での行動には移せなさそうな気もしますけども。
どちらにしても、かなりの速度で爆風と煙が回ってくるガソリン引火のような状況を想定するのは非現実的だろうとは思いますが。

まったく理不尽極まりない理由で命を奪われた被害者の冥福を祈ります。

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にしし(西村文宏)

にししでございます。本書いたり記事書いたりしてます。あと萌えたり。著書5冊発売中です(Web製作系4冊+小説1冊)。著書や記事は「西村文宏」名義。記事は主にAll Aboutで連載。本の最新刊は2011年3月に発売されたライトノベルでございますよ。

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